コラム ~セラピストの皆様へ~
セラピストの手
私たちセラピストは、日々さまざまな場面で「人の身体に触れています」。
物に触れようとするとき、手は自然とその形になり、
重さや硬さ、材質に合わせて無意識に調整されます。
さする、なでる、もむ、つまむ、つっつく、たたく──
過去の経験をもとに、手は瞬時に役割を変えることができます。
かわいい赤ん坊のほっぺに触れるとき、
手はやわらかく、自然と優しくなります。
相手に気づいてほしくて背中をトントンするときは、
不快な刺激にならないよう、どこか気を遣っていますよね。
一方で、ボクシングや空手のパンチでは、
同じ手が一瞬で「硬い手」に変わります。
意思や目的に応じて、私たちの手は自在に変化できるのです。
この「手の感覚」を理学療法・作業療法・言語聴覚療法に活かすことで、
機械にはできない、多様で繊細な仕事が可能になります。
たとえば、脳血管障害・片麻痺患者さんの評価。
皮膚にそっと触れることで、
表層の張りや緊張を感じ取ることができます。
少しスライドさせれば、
皮膚の柔軟性が伝わってきます。
筋緊張は、指腹でやさしく圧を加えることで、
その繊細な変化を感じることができます。
さらに深く押し込めば、
筋の奥、そして骨の硬さまでも
指先で感じ取れることがあるでしょう。
ハンドリングではどうでしょうか。
方向転換を促すとき、
「もう少し頑張ってほしい」と動きを引き出すとき、
刺激は少し強くなります。
動きを止めたいときは、
急ブレーキにならないよう、そっと身体を制止します。
足りない運動を補う介助では、
タイミングに合わせた適切な刺激へと変化します。
筋収縮を促したいときには、
筋を軽く叩きながら「ここを使うんだよ」という
非言語的な意思疎通も可能です。
一瞬でやわらかさや硬さを感じ取り、
目的に応じて形や強さを変えられる「手」。
この感覚こそ、私たちセラピストの大きな武器。
臨床の中で、これからも 手をフル活用 していきたいですね。